傷痕~想い出に変わるまで~
二人して黙り込んだままひたすらビールを飲み続けていると、女子大生風の若い店員が光の注文した料理を運んできた。

「お待たせしましたーっ、こちら豚の角煮になりまーすっ!」

いやいや、角煮になるのかよ!

いい歳してるんだから、せめて接客中だけでも正しい日本語使おうよ!

これから角煮になるなら今現在のこれはなんなの?

豚なの?ねぇ、豚なの?

私の目にはどう見ても豚の角煮に見えるんだけど!

……と、心の中でどうでもいいことに突っ込みを入れてみたりする。

ダメだ、私も緊張しすぎてどうかしてる。

「ビールのおかわり二つお願い。」

「はぁいっ、喜んでぇ!生中2丁追加のご注文いただきましたぁーっ!!」

「ハイッ、喜んでーっ!!」

なんだか今日はいつもに増して店員たちが元気で賑やかだ。

いそいそとバックヤードに戻ったかと思うと、あっという間にビールのおかわりを運んできてくれた。

「お待たせしましたぁー、こちら生中になりまーすっ!」

それもこれから生中になるのか?

だったら今現在のこれは生じゃない小なのか?

一度気になり出すと“こちら~になります”という間違った敬語もどきの言葉遣いが、どうしようもなく気になってしまう。

「こちらお下げしておきますねぇ。」

空いた皿やジョッキを手に彼女はいそいそとバックヤードに戻った。

返事とか語尾を伸ばす口調は多少気になるけれど、彼女は働き者で元気だけはいいらしい。

……どうでもいいか、そんなこと。

それより何より今は目の前にいる光の話がなんなのか、その方が大事だ。

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