鬼上司は秘密の恋人!?
「『辻立ちの王子様』って、なんですか?」
私がそうたずねると、徳永さんが答えてくれた。
「六年前。前回の参院選のときに、与党の推薦を受けて出た新人の宮越議員が当選した時にそう騒がれたんだよ。同じく与党の議員だった父親の跡を継いで、二世議員として出馬したんだけど、選挙予想では当選は難しいだろうと思われていたのにそれを覆した。けっこう話題になってたんだけど、六年前じゃまだ白井さんは高校生だから政治なんて興味なかったよね」
徳永さんの言葉に少し恥ずかしくなって「すみません」と頭を下げる。
六年前は両親が亡くなって、姉とふたりで暮らしていた頃で、ニュースになんて全く関心がなかった。
「街頭演説中に撮られた一枚の写真がSNSで広まって話題になって、一気に宮越議員の名前が売れたんだ」
「そうなんですね」
SNSがきっかけで票を集めるなんて、若手議員ならではだなと頷いた。
「それで当選して六年間、与党の議員としてやってきたけど、当選時以上に注目されることはなかったし、外見以外で話題になることもなかったし。二期目は難しいだろうって言われてるから、彼もなんとか票を集めたくて必死なんだろうね」
「六年前は、ずいぶん有能な秘書をお持ちで、なんて皮肉を言われて終わったけど、今回は必死過ぎて、悪魔に魂を売らなきゃいいけどな」
徳永さんの言葉に、それまでずっと黙り込んでいた石月さんがぽつりとつぶやいた。