鬼上司は秘密の恋人!?
「幸せな生活を当たり前だと慣れてしまったら、手放すときがつらいから……」
俯いたままそう言って、祐一に貰った飴を口の中に含む。
そのまま私が口をつぐむと、石月さんは「くだらねぇ」とつぶやいた。
きっと、この旅行が楽しみで、昨日はなかなか寝付けなかったと言ったら、石月さんは私をバカだと笑うんだろうな。
だけど、この旅行も石月さんとの生活も、私と祐一にとっては本当に『特別』で、こうやって一緒にいられるのは今だけなんだと繰り返し言い聞かせておかないと、幸せに慣れてしまいそうで怖いんだ。
誰かに優しくされることに、誰かに頼ることに慣れてしまったら、以前のようにふたりきりで生きていくのが寂しく感じてしまうから。
「わぁ! ふじさん、みえたよ!」
はしゃいだ声に顔を上げると、祐一が嬉しそうに窓の外を指差していた。