鬼上司は秘密の恋人!?
そうは思うけど、さっきの浴衣姿の石月さんを思い出してまた頭を抱える。
仕事中の気を張った姿も、家でのリラックスした表情も、もう見慣れているはずなのに。
広めに開いた衿合わせから見えた鎖骨とか、邪魔くさそうに袖元をめくり上げた肩とか、いちいち色っぽくてドキドキした。
「うーーーっ」
畳につっぷして唸っていると、「どうした」と突然声をかけられ驚いて飛び上がる。
慌てて振り返ると、石月さんが首をかしげ不審そうな顔でこちらを見下ろしていた。
「シャンプーわすれたー!」
そう言った祐一が石月さんの足元をすりぬけ、自分のリュックから子供用のシャンプーセットを取り出していた。
「じゃ、いってくるね!」
相変わらずキラキラと顔を輝かせながら、私に向かってぴっと敬礼をして走り去っていく祐一。
その様子をぽかんと眺めていると、石月さんがぷっと小さく吹き出した。
「なんかしらねぇけど、唸ってるとこ邪魔して悪かったな」
そう言い残し扉を閉める。
ぱたんと音がしてひとりきりになった私は、思わずまた畳につっぷした。
こうやって意識してるのは私だけなんだと思うと、なんだかすごく悔しかった。