鬼上司は秘密の恋人!?
「悪い。難しかったな」
そう言った石月さんに、祐一がきょとんとした口調で言った。
「でも、トーゴには、ぼくもゆきもいるよ」
そう言われ、石月さんは笑い声をあげた。
「そうだな」
そう優しい口調で言う。
私は露天風呂の湯船の中で、ぎゅっと自分の膝を抱いた。
なんだか心がそわそわして、誤魔化すように膝の上に顎を置き、鼻下までお湯につかる。
石月さんは、いったいどんな表情で、祐一と話しているんだろう。
そう思うと落ち着かなかった。
そんな私の視線の先で、湯船に浮かぶ一枚の葉っぱの船が、ゆらゆらと静かに触れていた。
「ゆきは、おひめさまになりたいんだって」
突然祐一がそんなことを言い出し、お湯の中でぶっと息を吐く。
祐一、そんな余計なことを言わなくても……!
そう思ったけど叫ぶわけにもいかず、黙って耳をすませる。
「はぁ? お姫様?」
石月さんの呆れた口調に頬が熱くなる。
いい歳をして、お姫様に憧れてるなんて、バカにされるに決まってる。
「まえに絵本をよんでるときにね、あたまにしろい、ひらひらしたベールをつけたおひめさまをみて、いいなぁっていってた」
「ふーん」
「すてきなおうじさまがいればいいのになぁって」
「王子様ねぇ……」
興味なさげな石月さんの相槌に、いたたまれなくなる。
「ほら、んな話はいいから、肩までちゃんと浸かれ」
「はぁい」
そんな会話を聞きながら、私はそっと露天風呂から上がった。