鬼上司は秘密の恋人!?
 

少し長く湯船につかりすぎたかもしれない。
すこしくらくらしながら浴衣を身につけロビーを歩く。

火照る頬を冷まそうと、手でぱたぱたと顔を扇ぎながら歩いていると、小さな売店の前でスーツの上に紺の法被を羽織った店員さんがプラスチックの小さなコップを配っていた。

喉が乾いていたので、美味しそうだなと思いながら近づくと、「どうぞ」と笑顔で手渡された。
お礼を言って口をつける。
しゅわっと微かな炭酸と、喉を通った途端熱くなる不思議な喉越し。
ジュースだと思って一気に飲み干したあと、びっくりして目を丸くした。

「微発泡の日本酒なんですよ」

そう言われ、慌てて口元を手で覆う。
日本酒なんて初めて飲んだ。
今まで一度もお酒も飲んだことのなかった私は、はじめてのアルコールに頭に血が登る。
頬が一気に熱くなる。

「あ、アルコールだめでした?」

慌てる店員さんに、「大丈夫です」首を横に振って誤魔化す。
見ればちゃんとコップや瓶が置かれたテーブルに、日本酒の試飲と書いてある。

「飲み慣れないから、びっくりしちゃって」

なんて言いながらも、どんどん頬が赤くなっていくのがわかる。
こんな少しのお酒で酔っ払うなんて恥ずかしくて、誤魔化すように急ぎ足で歩きだした。

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