鬼上司は秘密の恋人!?
 
振り向くと、眉をひそめた石月さんがこちらを睨んでいた。

「石月さん……」
「お前は目を離すと、すぐふらふらどこかに行くな。チビよりずっと手がかかる」

そう言って、ため息をつく。

「ゆきー!!」

その後ろからぱたぱたと走ってくる祐一を見た男の人は、驚いたように「息子さん?」とたずねてきた。
甥っ子です、と口を開きかけた私の言葉を遮って、「そうですが?」と石月さんが冷たい口調で言って私の肩を抱いた。

私の赤くなったうなじや頬を隠すように胸の中に囲い込まれ、驚いて顔を上げると、「行くぞ」と短く言う。
ぼんやりと至近距離の石月さんの顔に見とれていると、大きなため息をつかれた。

無事部屋に戻り、ほっとして畳の上にへなへなと座り込む。
ひんやりとした畳の感触が気持ちよくて、そのままころりと寝転がると、「酔っぱらい」と石月さんに睨まれた。

「これが酔っ払うってことなんですかね。頭がふわふわしてます」

なんだか妙に幸せな気分で、畳に寝転がりながら、石月さんを見上げて笑う。

「なんで酒なんて飲んだ」
「売店の前で試飲に日本酒を配ってたのを、お酒だと気づかないまま飲んで」
「なにか分かんないものを不用意に飲むなよ」
「だって、長湯してのぼせて喉が乾いてたんです」
「無防備にもほどがある」

はぁーっと大きくため息をつきながら、石月さんが客室に置かれたグラスにミネラルウォーターを注ぐ。
その様子を寝転がったまま眺めていると、乱暴に手首を掴まれた。

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