鬼上司は秘密の恋人!?
「起きろ」
そう言って、私の腕を引っ張り起き上がらせる。
片腕で私の背中を押さえながら、水の入ったグラスを渡してくれた。
「あ、ありがとうございます」
冷たい水が喉を通り熱い体の中に落ちていく。
ひんやりとした感覚に、酔が覚めていく気がした。
ひと口飲んで石月さんの顔を見上げると、無言で顎をしゃくり、全部飲めというように睨む。
言われたとおりグラスに口をつけ、水を飲み干す私を見て、石月さんは額を押さえながらため息をついた。
「ほんとお前は……」
指の間から、呆れたような視線がこちらに流れてくる。
一度は引いたはずの酔いが、また戻ってきてしまったのか、頬が熱くて仕方ない。
「まだ酔ってんのか」
そう問われ、首を横に振る。
「わかりません」
「なんだそれ」
「だって、お酒を飲んだのはじめてだし」
私が素直にそう言うと、こちらを見つめたまま「ふーん」とつぶやいた。
石月さんの視線がゆっくりと私の肌の上をなぞる。
お酒のせいで火照った頬を、潤んだ目を、少し荒い呼吸を吐く唇を、赤くなった首筋を。
ゆっくりと瞬きをして、またこちらを見下ろす。
たったそれだけのことに、動揺して体が震えた。
「ね、トーゴ! さっきかってくれたジュースのんでもいい?」
背後から明るい声が聞こえ、石月さんは小さく笑って振り向いた。
「いいぞ。フタ自分で開けれるか?」
なにごともなかったようにそう言って、私の背中から手を離す。
「がんばるー」
「おう、頑張れ」
「んーーーっ!」
ペットボトルのフタに苦戦して顔を真っ赤にする祐一を見て、石月さんが爆笑する。
その様子を眺めながら、私は畳の上に崩れ落ちた。
ひとりだけドキドキして、ばかみたいだ。