暴走族に恋をする。



「…私、本当は勉強が好きではありません。
ただ…ただ、勉強のできるお兄ちゃんが羨ましかった。

名堂学園に通って、成績がよくてお母さんに誉められてるお兄ちゃんが羨ましかった。
…だから、私は小さい頃から名堂を受けたいと言ったの。
名堂を受験したいと言ったときのお母さんの喜んだ顔を、私は忘れたことはない。
幼稚園児だった私の記憶だけど、それだけは強く残ってる。

お母さんに喜んでもらいたくて…お母さんに認めてもらいたくて
ただただそれだけの理由で、私は勉強をしてきました。」


お母さんは覚えていないでしょう?
最後に私に笑ってくれた日のこと。

お母さんが笑顔の時はいつもいつもお兄ちゃんのことだったことを
私は、小さい時からちゃんとわかってたよ。


「そんな私が挫折をした時、お兄ちゃんが死んで…
それから私はもっともっと勉強だけをしてきた。
お兄ちゃんは私が殺したようなものだから……

だから、私は私の感情を殺した。
お母さんの期待に応えられるように
お兄ちゃんの分まで生きようと心に誓い、私は私を殺しました。
だけど全然結果が追い付かなくて……

…勉強がどんどん嫌いになっていった。辛かった。
それでもそんな感情を芽生えさせてはいけないと、自分に言い聞かせてきたの。

だけど…そんな私に感情を芽生えさせては他の誰でもない、快斗だった。
快斗を好きになってから、私は毎日が楽しくなった。
知れば知るほど、楽しいことに夢中になっていった。

……だから…私はもう、
塾をやめたい、です…」


もう、お母さんの言いなりになるのは嫌だった。
私は私のやり方で、幸せになりたかった。


「……塾をやめて、どうするの?
この人たちと、どんどん落ちていく気?」


「それは私の中で決めていきたい。
…お願いだから、もう口出ししないでよ。」


「私は最初っから、桜子には期待してこなかった。
だけどそんな桜子に期待しろと言ったのは他の誰でもない、桜子じゃない。
違う?

私はそれに応えるように、あなたにもお金をかけてきた。

それなのに無理だから、もう口出しするな?
自分勝手にもほどがある。

違う?桜子。
少しは、自分の言動に責任を持ちなさい!」


そう言われてしまうと、またなにも言い返せなくて…私はまたうつむくしかなかった。


「…違いますよ。」


その新しい声に、私はドアの方へと視線を向けた。



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