恋は世界の片隅に【短編集】
「春哉!お前、なんだよ、それ」
「ハル!?それ……」
クラスの誰もが、春くんを見て愕然としている。
それもそのはすだ。
だって春くんの手には、10本以上はあるだろう、薔薇の花束が握られていたのだから――……。
呆然と目を見開いたままのあたしに、春くんが気づいて、目が合う。
そして、春くんは一歩ずつ、あたしの席へと近づいてくる。
クラス中の視線があたしたちに集まる中、春くんは口は開いた。
「友梨。誕生日、おめでとう」
……え?
一瞬何が起こったのか分からなくて、あたしは何度もまばたきをした。
すると春くんは、黙ったまま花束を差し出してくる。