狼少年、拾いました。
「ゼーラ!」

自分の結婚の準備で忙しいはずなのに、ゼーラは暇を見つけてはよく尋ねてきてくれていた。

「良かった!このところミェルナったらいないことが多いから、会えてよかったわ。」

「そうなの、最近忙しくて。」

何気ない風を装って答えたが、そういったことに罪悪感をあまり感じなくなってきたことに驚く。

だがそんな心の余裕は次のゼーラの一言で消え去った。

「ねぇ、ミェルナ。ほんとに、わたしに隠し事してない?」

今までの雰囲気とは一転、真剣な表情をするゼーラ。

(どうしてそんなことをきくんだろう。)

まさか、レスクを匿っていることを悟られている?

いや、そんなはずはない。

レスクに会えたらゼーラはさぞかし喜ぶだろう。

盗賊に襲われていたゼーラたちを助けたのはレスクだ。

きらきらと星のように目を輝かせながらその時の様子を語った彼女のことを思うと、ぜひその恩人に会わせたかった。

だがスティーヌに強く念を押されているように、追われている身であるレスクが危険に晒される可能性を高める訳にはいかなかった。

「...何もないわよ?どうして?」

笑顔にどこかおかしなところはないだろうか。

ミェルナの心配とは裏腹に、ゼーラはこざっぱりした笑顔を口に浮かべた。

「そう。ならいいの。最後に確かめたかったから。」

「え?」

「明後日嫁ぐわ。もう準備で来られないから会いに来たの。」
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