狼少年、拾いました。
 どうやら斜面に掘り進めた壕のようなものに扉を嵌めたらしい。

 家具などは置かれておらず、クモの巣があちこちに張られているのが薄明かりの中でも分かった。

 「へえ。こんな辺鄙な村にも色々あるんだな。」

 少しカビ臭い中をぐるりと見回すレスク。

 「ここでいいだろう。勿論村人は来ない。」

 その言葉に安心して力が抜けたのか、レスクは崩れ落ちるように膝をついた。

 そしてそのまま、半ば気を失うように眠りに落ちてしまった。

 
 「だいぶ気が張ってたのね。」

 一通りの手当てを終え、ミェルナは軽く息を吐き出した。

 「かなり傷付いていたからな。」

 「気付かなかったわ…そんな風には見えなかった。」

 ミェルナ自身にも余裕がなかったのもあるかもしれないが、この隠れ家にたどり着くまでのレスクの様子からはこれほどの怪我は伺えなかった。

 不思議そうに目を凝らすミェルナを見てスティーヌが言う。

 「ミェルナはまだまだ未熟だからな。これからはもっと注意を払え。色々な物にな。」

 どういう意図で最後の一言を付け足したのか分からなかったが、ミェルナはうなずいた。

 「そうね……。それにしてもひどい怪我。…カゲヌノってほんとに恐いわ。」

 その名を口にすると、あの肌が粟立つようなおぞましい姿が脳裡によみがえった。

 あんな化け物と対峙し、戦うなど想像も出来ない。

 それをやってのけるレスクはよほど勇敢なのだろう。

 「いや……これは自傷だろうな。」
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