次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「でも、キス自体はそれ以降もあったりするけど……朋子相手に」

「は?」

 さすがに直人も顔を上げた。私は苦笑する。

「あの子、普段はセーブしてるけど、お酒が大好きで、酔うと、とんでもないキス魔になるんだよね」

 はじめてされたときは驚愕だったが、最早、お約束になりつつあるのは、どうしたものか。それにしてもこの前、実家に帰ってきたときはひどかった。

 私の好きな俳優さんと恋人役ではないが、共演してキスシーンがあったことを自慢してきたかと思うと、いきなりキスされて『これで間接キスだね、よかったね』とか言い出す始末である。

 いつもとんでもない不意打ちを食らわしてくるのだ。それにしても、女優である朋子にとってはキスぐらい、いちいち気にすることでもないのだろう。

 それが十代の多感な時期からのことなのだから、たいしたものである。感動的なキスシーンを見てジーンとしている私の隣で「これリハーサルもあわせて十回もしたよ」なんて聞かされた身としては、いまいちキスに対して夢見るのも見られなくなってくる。

 そんなことをつらつらと説明して、私は話を戻した。つまり、キスについてはそういう事情もあり、恋愛経験にまったく比例せず、どこか冷めてしまっていた。

 でも、だからといって誰とでもするわけでも、許すわけでもない。なんとか分かってもらえただろうか。それにしたって
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