次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「仕事なかったら行こうよ。幹事は藤沢がしてるみたいだし。三日月さん、いつも欠席だからさ。妹さんも話題の人だし、みんな会いたがってるよ」

 そんな風に強く勧めてくれるのは有難いが、私は苦笑するしかできなかった。そのあと、私はあまり発言できないまま、彼女たちは妹の話題でしばらく盛り上がって、行ってしまった。

 彼女たちが去って、どっと疲れが押し寄せてくる。ふと顔を上げると、先ほど男性が彼女と待ち合わせていた場所に見知った顔があった。

「直人」

 すぐに気づかなかったのは、いつも見慣れているスーツ姿ではなく、シャツにネイビーのサマージャケットを羽織って下はジーンズとシンプルな格好だったからだ。

 おまけに眼鏡までかけている。もちろん私のものとは違って、フレームもお洒落なものでよく似合っている。やっぱり外見がいい人はなにを着てもお洒落に見えるな。

 と、その姿をまじまじと見つめていると、何故か直人は怖い顔をしてこちらに歩み寄ってきた。なにかまずいことをしただろうか。私の格好が気に入らないんだろうか。

 あれこれ考えながら動けずにいると、彼は表情を崩さないまま私の前までやってきたので、私は責められる前に尋ねた。

「なんで怒ってるの?」

「むしろ、なんで怒らないんだ」

 不機嫌さの滲む声が聞こえたと思ったら、その手が私の頭の上に置かれる。

「晶子をだしにして、妹の話ばかりで。久しぶりに会って、あれは失礼だろ」

 そこで私は、ようやく直人の言いたいこが、おぼろげに分かってきた。
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