次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「なんだ、そんなこと」

 とりあえず、自分に対して彼が怒っているわけではないと分かって、ほっと胸を撫で下ろす。しかし、直人の機嫌は相変わらずだ。そんなに眉間に皺を寄せると、せっかくの男前が勿体ない。

「あんなのよくあることだよ、怒るほどのことじゃないって。正直ね、私は彼女のこと、あまりよく思い出せなかったんだけど、朋子のおかげで、私は色々な人に覚えられちゃって。だから、そんな人たちと話す話題ってどうしても朋子絡みのことになっちゃうんだよね」

 有名人の身内ならではでしょ。なんて言ってみたが、直人は渋い顔をしたままだった。

「同窓会に行かないのも、そういう理由なのか?」

「まぁ、それもあるんだけど……」

 私は曖昧に答えた。直人の言うとおり、卒業してすぐの同窓会には友人の強い勧めもあって参加した。その頃、ちょうど妹が朝ドラにレギュラー出演することが公表され、そこまで親しくなかったクラスメートたちからも、そのことばかり話題を振られて正直、辟易したのだ。

 前にも言ったが、仲のいい友達とは個人的に会っているし。ただ、欠席を続けているのは、それだけが理由ではないのだけれど。

「幹事をしている彼が、その、話したけど、高校のときに付き合ってた人で」

 私はしどろもどろになりながら白状した。この事実を直人に伝えるべきかどうか悩んだが、疚しいことはないし、同窓会を欠席することで変に心配をかけさせたくない。
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