次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 それなのに、なんでこんな些細なことで私はさっきから、いちいち動揺してしまっているのか。

「朋子は、直人と何回くらい会ったの?」

 これは不自然な質問ではないはずだ。自分に必死に言い聞かせながら尋ねる。

『二回だよ。もちろん仕事の話で二人きりで会ったわけじゃないよ。直人さんの秘書もいたし、疚しいことはなにもないからね。晶ちゃんが心配するようなことはなにもないから。誤解させるような真似して本当にごめんね』

「大丈夫、分かってるよ」

 私は静かに答える。二人の仲を疑ってなんかいない。それは間違いない。けれど、それならこのざわざわと混ざる複雑な感情はなんなのか。 

『写真撮られたときは、ちょっと世間話で盛り上がってて油断してて。晶ちゃんにも直人さんにも迷惑かけちゃって申し訳ないよ』

「そんなことないよ。朋子だって大変なのに」

 返事しながら、内心では違うことに気を取られる。世間話って、どんな話で盛り上がったんだろうか。仕事のことでなのに、二回会っただけで、そこまで親しくなれるのか。

 そうだ、昔から朋子は私と違って人懐っこく、誰とでもすぐに打ち解けられていた。私は、直人の基本的な情報をなにも知らない。いつも話すのは映画のことばかりの自分が、ここにきて憎く思えた。

『晶ちゃんさー。本当は直人さんのことをどう思ってるの?』

 いきなりの質問に私は目を剥いた。朋子の意図がまったく読めない。

「どう、って」

『前に話してた通りなら、私が直人さんとの結婚を考えようか?』

 あまりにも衝撃的な提案に私は目の前が真っ暗になった。なにを言われているのかすぐに頭に入ってこない。通り抜けていく言葉を必死に掴んで意味を理解する。
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