次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「ね、どうだっ……」

 私は目をこれでもかというくらい見開いて固まってしまった。声を出すのも止めてしまうくらいだ。何故なら、隣でテレビ画面に釘付けになっている彼の瞳は心なしか潤んでいたからだ。

 そこで、ようやく私に気づいた彼と目が合い、それは確信に変わる。思いっきり顔を背けられてしまい、彼は肩を落とした。

「やられた。内容は分かっていたはずなのに」
 
「そんなに感動した?」

 なんでもないかのように尋ねると、彼は左手で目元を押さえながら答えてくれた。

「話の作りとして、仕事の立て直し方や、やり方には色々と突っ込みどころがあるが、なかなかいい映画だった」

「そっか」

 私は目線をテレビ画面に戻す。

「なにも言わないのか?」

「映画に対する感想は、人それぞれじゃない?」

 自分がいいと思ったものでも、他人が観たらそうでもなかったりするのは世の常だ。どんなものであれ、それを否定する気などまったくない。もちろん、同じような感想を抱けたら、それはそれで嬉しいけれど。

 すると彼の顔がようやくこちらに向く。その表情は、少しだけ気まずそうだ。

「そうじゃなくて」

「直人が意外にも涙もろいってこと?」

 先に言葉を続けると、彼は目を白黒させた。その瞳はやっぱり少しだけ赤い。でも直人の場合、疲れもあると思うけど。
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