次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 相手になんとか時間を作ってもらったこの状況で、こちらの都合で、延期させるわけにはいかない。なにより、そんなことを申し出れば、そもそもの商談のチャンス自体が潰れてしまう可能性もある。

 郵送なんかしていては間に合うはずもなく、ここは直接、持っていくしかない。大急ぎで提携している会社から条件に合うハンドキャリーを探してもらい、航空券を手配して、必要書類を用意し、依頼してきた会社と内容を詰めていく。

 時間が限られている中で、一刻も早くというプレッシャーを感じながら皆、必死だった。依頼してきた会社のためはもちろん、仲介に入ったわが社の信用問題にも関わることだ。

 サマータイムはもう実施されているので、時差を計算に入れつつ、あちらが日本よりも時間が遅れていることに感謝する。

 そして、胃をキリキリさせながら、なんとか書類をを作成し、宛がわれたハンドキャリーがブリュッセル行きの飛行機に乗れたとの報告を受けてホッとしたところなのである。

 もちろん、現地入りして商品を無事に届けるまで油断はできないのだが、とりあえずの山場は越えることができた。

 非常事態に備え、何人かは残ることになったが、大多数は帰ることを許された。申し訳ない気持ちもあるが、ここは素直に甘えておくことにする。

 帰る準備を整え、社員専用のエントランスに足を進めているところで、何気なく携帯を確認した。すると思わぬ人物から着信があったことに目を剥く。

 直人?

 ここは会社なので迷ったが、あまり人もいないので隅っこでかけ直してみることにした。どうしたんだろうか。私は電話を耳に当てた。
< 64 / 218 >

この作品をシェア

pagetop