次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「うん。もちろんフィクションだって割り切ってはいるけど、言葉でしか知らない事実をこうやって映像で観るのは勉強にもなるし、色々考えさせられるし」

 それに対し、直人は返事することもなくそのまま自室に向かった。私はその背中を見送り、休憩がてらなにか飲もうと席を立つ。

 一緒に観てくれる? なんて言ったものの、忙しい彼はやはり帰ってくるのが私よりも遅いし、あんな調子だ。

 それに私も悪いのだが、仮にも仲を深めようとしている男女が一緒に見るような映画のチョイスではない。自分の趣味全開である。

 今日、ちょうど作成した書類の取引相手がアフリカだったこともあって、この映画を思い出して選んだのだ。

 頭では別のことを考えならが、手を動かして、てきぱきとアイスティー作る。多めの氷が入ったグラスを持って戻ると、私は足を止めた。

「どうした?」

「どうしたの?」

 発言が重なって、私はますますそこから動けなくなる。なんたって自室に行ったはずの直人は、着替えてリビングのソファに座っていたからだ。

「観ないのか?」

 固まっている私に対し、直人は先ほどの私と同じような体勢で聞いてきた。

「観て、くれるの?」

「晶子が言ったんだろ」

 たしかにそうなんだけれど。質問に質問で返すと、彼は眉間に皺を寄せる。私は止まっていた分、急いでソファまで移動すると、やはりクッションひとつ分空けて、直人の隣に遠慮がちに座った。

 そして再生ボタンを押して映画を再開させる。
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