コミュ障なんです!

「で、でもですね。私」

「永屋くんは、今、社内一仕事を取ってくる男よ。あなたがちょっとミスしたって問題ないからいいから行ってらっしゃい」

「いやぁ。ミスは困るけどなぁ」


ニコニコしながらも、彼は手持ちのファイルから書類をまとめて出すと、私に渡した。


「じゃあすぐ準備してくれる? これ資料。行く途中で説明するから」

「は、はい」


もはや断れるとは思えない。
出だしで躓いてしまったら、覆すだけの会話スキルなど私にあるはずがないのだ。

仕方なく自分のデスクに向かうと、なんでか永屋さんはずーっと私を見てる。


「すぐ行くので、ロビーで待っていてください」

「いや? 目を離したら逃げそうだから。ここで待ってる」


にっこり笑ってますけど、言ってること結構ひどくありませんか?

コンピュータの電源を切り、筆記用具を入れている間に、向かいの席の女子社員ふたりが、パーティション越しに小声で話しているのが聞こえる。


「ちょ、永屋さん来てる」

「やばい、格好いい。いいなー、私が代わりに行きたかった」


このタイプってモテるんだ。そうかぁ、そうかぁ。だったら代わってほしいですよ。
私なんかが行くより、可愛い女の子が行ったほうが先方のウケもいいに決まってますし。

「あの」

「準備できたか? 悪いけど時間無いからすぐ出るぞー」

「え、あ、あのっ」


手首を握られた。
これが友好的な握手であるはずがない。むしろ捕獲! 私、逃げるって思われてる!

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