イケメン富豪と華麗なる恋人契約
ここまできてようやく、日向子は望月商事の顧問弁護士が自分を訪ねてきた理由に見当がついた。

祖父が亡くなったことで、彼女にもいくらかの財産分与がある、ということなのだろう。困窮している我が家の経済状況を思えば、たとえわずかだとしてもありがたい。

だが、一度も会ったことのない祖父の財産を、日向子がもらってもよいものだろうか?
相続権がどれほど正当なものであったとしても、人として、自分にはその資格がないような気がする。


(でも、仮に百万円あれば、大介に高校でも陸上をやらせてあげられる、よね? 恥を忍んで受け取ろうか……でも……うーん)


唸りながら頭を悩ませる。

そのとき、最初に千尋が口にしたことを思い出した。


「あ! あの……沖さん、最初におっしゃいませんでした? もっと、お金になる仕事がある、みたいなことを」

「ええ、言いましたが」

「それって、望月商事で雇ってもらえるってことですか? わたし、高卒ですが五年間、小野寺先生の仕事のサポートをしてきました。事務関係の仕事なら、どんなことでもします!!」


日向子はここぞとばかりに自分を売り込む。

すると――千尋は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたあと、堪えきれないとばかりに吹き出した。そのまま手すりを掴み、身体をふたつ折りにして笑っている。


「わたし、別に笑いを取ったつもりはないんですが。これでも、かなり真剣なんですけど」

「いや、失礼。あなたは……よくわからない人だ。放っておけば乗り込んでくると思っていたのに、社葬にもやって来なかった。その後、一週間待ってもなしのつぶてで、とうとうこちらから足を運んでしまいました」

「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってください!」


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