イケメン富豪と華麗なる恋人契約
どうあっても千尋は、本当は日向子が祖父のことを知っていた、と言いたいらしい。
ひょっとしたら、亡くなったことも知っていたのに、葬儀にも出席しなかった、と責めているのだろうか?


「言ったはずです。祖父がいたことなんて、わたしは知りませんでした。母からも聞いてません。ましてや、亡くなったことなんて……」

「――六年前の火事の直後、あなたは代理人を立てて先代社長に支援を申し入れた。当時の社長秘書の判断で、あなたが直接、先代社長に会いにくることを条件に、いくらかの見舞金を払ったそうです」


まったく身に覚えないことだった。
日向子は大きく目を見開き、千尋をみつめることしかできない。


「会いにくれば相当額の支援を引き出せたはずなのに、あなたはこなかった。どうしてです? たかだか数百万の見舞金で満足したわけではないでしょう?」


言いながら、千尋は一歩、日向子との距離を詰めた。

たった一歩、それだけのことなのに、千尋に気おされるようにして、日向子は数歩後退する。屋上のフェンスに背中がトンと当たった。


「いい、加減に……するのは、そっちです! そんなお金、わたしは知りません!! 望月商事では雇えないって言うなら、はっきり、そう言ってくれたら済むことでしょう!?」


それだけでいいのに、まるで日向子が不幸を理由にお金をたかったように言われるのは心外だ。


「でも、知らなかったとはいえ、孫のわたしが葬儀に出られなかったのは残念だし、申し訳ないことをした、と……」

「そんな言葉は信じられませんね。七年前、孫娘にひと目会いたいという奥様の願いを叶えるため、先代社長は朋子さん……あなたのお母さんに和解を申し入れた。だが、相当な和解金だけ手にされて、約束を無視された。あなたの祖母上は、無念のうちに亡くなられたそうですよ」


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