イケメン富豪と華麗なる恋人契約
この人に言っても仕方がない。

祖父と直人の間になにがあったとしても、祖父はもう釈明できないのだ。なにも知らない日向子が、祖父を責めるのは間違っている。

そう思っていたのだが、あまりな言われようについつい反論してしまう。


「ちょっと考えたらわかりそうなもんでしょう? 火事のあと、何百万ものお金をもらっていたなら、こんなに貧乏なわけがないじゃない。弟の高校の費用だって困ってるくらいなのに……」


最後のほうは、愚痴のようになっていた。

すると、千尋は額に落ちた前髪をすくい上げるようにして、


「たしかに、あの大金の行方が気になるくらいの困窮ぶりですね。家賃も遅れがちで、毎月、催促されているようですし」


澄ました顔で言う。


「そ、そんなことまで、調べたんですか!?」


直人の調査をしていて、日向子までたどり着いた、と言っていたが……。


「それなら、あなたが望月グループに入ることになんの問題もなさそうだ。では、先代社長の遺言に従い、財産の相続手続きを開始する、ということで――」

「どうして、そうなるんですか? わたし、お祖父さんの財産を相続するなんて、ひと言も言ってませんけど!!」


まるで言葉の通じない相手と話しているみたいだ。

だが、千尋の顔を見上げたら、彼も同じような顔をしてこちらを見下ろしていた。


「相続……しないんですか?」

「もらう理由がありません」

「その場合、あなたが望月グループで働くことはできませんが?」


相続を放棄しながら、雇ってくれというのは虫のいい話なのかもしれない。日向子はそう納得して、あらためて断ろうと口を開く。


「わかりました。諦めま……」

「なるほど、先代社長が仲違いして駆け落ちした息子を見殺しにした腹いせに、あなたは望月グループを潰そうというわけだ」

「……はぁ?」


千尋の言わんとすることがわからず、日向子の頭の中にはクエスチョンマークが飛び交った。


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