イケメン富豪と華麗なる恋人契約
「素直に受け取ったらどうです? ふたりの弟さんを大学に……それも、私立の医大にだって行かせてやれますよ。それとも、あなたのプライドを守るためなら、中卒で働かせたほうがマシだ、と?」


意地悪な言い方だが、間違っていないのが悔しい。
日向子が昼夜働いても、弟ひとり満足に高校へも行かせてやれそうにない。だが、たとえ望月家の関係者から『金目当て』と罵倒されても、ここで首を縦に振れば、少なくとも大介と晴斗には充分なことをしてやれる。


「ああ、それから、あなたは後日、警察から呼び出しを受けるでしょうね。私に対する暴行罪で」

「はぁ?」


警察やら、暴行罪やら、物騒な単語が並び、日向子はギョッとした。
たしかに、手を出してしまったことは事実だが、もとは言えば、千尋の言葉の暴力が原因だ。


「だっ、だったら……わたしだって、あなたをセクハラで訴えます!」

「それはそれは。でも証拠もないのに、味方になってくれる弁護士がいますか?」

「証拠って……そっちだって」


日向子が言い返そうとしたとき、千尋はスッと身を屈めた。
彼が拾い上げたのは、日向子が叩いたときに弾みで落ちた眼鏡。コンクリートに打ちつけられたせいか、ガラス製のレンズにヒビが入っていた。


「器物損壊罪にもなりそうですね」


目の前に壊れた眼鏡を突きつけられ……日向子は息を呑んだ。


< 25 / 28 >

この作品をシェア

pagetop