イケメン富豪と華麗なる恋人契約
どうしてこんなことになってしまったのか、自分でもよくわからない。

少し前まで祖父がいたことすら知らなかった。しかもその祖父が大会社の社長だったとは。


(お母さんも、そのことくらい教えておいてくれたっていいじゃない)


だが千尋は『先代社長の遺言に従い、財産の相続手続きを開始する』と言った。
それは、祖父が遺言に日向子の名前を書いていたということ。

千尋が日向子を責める言葉どおりに祖父も思っていたなら、どうして日向子に財産を残すような遺言を書いたのだろう?

日向子が俯いて黙り込んでしまうと、ふいに千尋の声が柔らかくなった。


「とはいえ、あなたが先代社長の相続人となられるなら、話は別です」


心の中で『やられた』と思った。これはきっと駆け引きで、日向子は嵌められた気がする。


「特に、望月グループの“新社長”を警察沙汰には巻き込めませんから」

よくもこれだけスラスラと出てくるものだ。

日向子は感心しながら千尋を見上げ――直後、彼が口にした内容に、遅ればせながら衝撃が走った。


「新社長!? 今、新社長って言いました?」

「はい。言いましたが、なにか?」

「それって、まさか、わたしのことじゃないですよね?」


日向子はおっかなびっくりで尋ねる。対して、千尋は実に爽やかな笑顔で答えた。


「もちろん、日向子さん、あなたのことですよ」


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