君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】



裕貴先輩に渡されたタオルをぎゅっと握り締める。


――――裕貴先輩を好きになって、こうして目で追うようになってからどれくらい経つだろうか。


先輩のひたむきに練習する姿や性格を知っていくうちに、気がついたら好きになっていた。


名前を呼んでもらえるだけで嬉しくて、学年が違うため部活のときくらいしか会えない分廊下ですれ違っただけで舞い上がってしまう。


部活終了後に他愛ない話ができたときは、家に帰ってからもニヤけた顔がもとに戻らない。


そんな毎日。


でも先輩には好きな人がいる。


実際に先輩の口から聞いたわけじゃないけど、その女の人と楽し気に話すところを見かけることがあった。


部活前たまたま女の人が体育館前を通ったときも声をかけにいってたし。


先輩の雰囲気や態度からして好きなんだろうなって直感した。女の勘ってやつ。


相手の先輩は特別美人ってわけでも可愛いってわけでもないけど、他の女子とは違う何かを感じた。

< 142 / 209 >

この作品をシェア

pagetop