君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】


この学校で知らない人はいない永瀬伊織先輩が、反対側から歩いてきた。


うわぁ、本当に格好良いっていうか綺麗っていうか。


いつもクラスの子が永瀬先輩の話で盛り上がっていて、レアな姿の隠し撮りも出回っているという噂もあるくらい人気の先輩。


そんな人が目の前にいるなんて……いや2年生の階にきたんだから会ってもおかしくはないけど。


周りを囲む数人の女の先輩も可愛い人ばかりで見惚れていたせいで、先輩達を上手くかわしつつ教室に行くタイミングを逃してしまった。


廊下は狭いため、仕方なくぴったりと壁に張りついて先輩達が通り過ぎるのを待つ。


そこへある人が来て、私と同じように永瀬先輩達と出くわした。


「……あ」


この人、裕貴先輩が好き……かもしれない人だ。


今前には進めないから私みたいに避けるんだろうな、と思ったらやはり壁際に背をつける。


距離が近くてちらっと横目で見てみると、手に持っていたプリントに『森野香里』と綺麗な字で書いてあって。

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