君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
名前、もりのかおりっていうんだ。
あまり長い間見てると不審に思われるから、すぐに視線を前に戻す。
すると一瞬、永瀬先輩がこちらを向いた
まさか私の方を見てる?!って思ったけど違う、森野先輩だ。
2人の視線がほんの僅かな間絡まって、けれどお互いすぐ逸らしてしまう。
永瀬先輩は私達の横を通り過ぎて階段を下りていった。壁から背を離した森野先輩は、永瀬先輩が去ったあとを見つめる。
その表情を見て、そっか。あの人のこと好きなんだなって思った。
きっと、私も裕貴先輩と森野先輩が話してる姿見たときこういう顔してる。
先輩は数秒後には背を向けて、何事もなかったかのように自分の教室へ入っていった。
私じゃ知りえないことが2人の間にあったんだろう。
……皆色んな想いを抱えて、恋をして、悩んで、日々を過ごしてる。
でもそれは表面上じゃ分からなくて、あたかも皆普通の高校生活を送ってるようにみえる。
今この場にいる人達は、裕貴先輩に対する私の気持ちには気づかない。……当たり前か。
小さく溜息を吐いて、森野先輩の隣のクラスへ顔を出した。