君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
元気な春子ちゃんの後ろには、散り始めている桜。
潔く散っていく刹那的情景がいい、儚さが美しいのだと言う人もいるけど、私は出来ればいつまでも咲いていてほしいと思う。
「春子ちゃんはせめて夏の終わりまで咲いててね」
「これ、そんなに長い間咲くんだ?」
「っえ、え!?」
急に背後から声をかけられて驚いたせいで、カツンとミニジョウロを床に落としてしまう。
「あ、いきなりだったからびっくりさせた?ごめん」
ドクドクドク、不規則に脈打つ心臓は落ち着きそうにない。一瞬本気で心臓が止まるかと思った。
「ほら、ジョウロ」
屈んで私が落としたジョウロを拾い、流麗な笑顔を向けてくれたのは。
「い、伊織君」
夕焼けの茜色のせいか、ミルクティーの髪が淡くオレンジ色に染まっている。
とても綺麗な色に目を奪われていたけど、そうじゃなくて。
何故、伊織君がここに。
「この花、誰も水あげてないのによく咲いてんなって思ってたら、森野さんが世話してくれてたんだ」
「う、うん。元気に咲いてくれると……嬉しくて」