君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
さて、運ぶか。
結衣を帰すために1人でも平気って言ったけど、実際はわりとキツい気がする。
まあ頑張ればなんとかなるよね。よいしょっとプリントの山を抱えて職員室を目指す。
急がないと腕が疲れちゃう。足元に注意しながらも歩くスピードは速める。
「意外と職員室遠いんだよな」
もっと近くにあれば楽なのに。ひたすら歩き続けていると。
「あれ、森野さん」
誰の声かなんて、すぐに分かった。
「伊織君」
「うわ。もしかして日直の仕事?」
「正解。無心で終わらせたんだよこれ」
「そのプリントの山、重いだろ。貸して」
「えっ」
伊織君は私が持っていたプリントの3分の2以上を抱えた。びっくりするほど腕が軽くなる。
「職員室に持ってけばいい?」
「そうだけど、伊織君が持ってる半分私が持つよ。これじゃ伊織君が重い」
「余裕だから。早く行かないと先生待ってるし」
「え、ちょ、伊織君」
伊織君は唇で綺麗に弧を描き、スタスタ先に進んでいく。
あの量を平気な顔で持っていられるって、やっぱり男の子なんだなと頭の片隅で考える。