君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
当たり前だ、ここは立ち入り禁止の場所。先生に見つかったらこっぴどく怒られるに違いない。
でも、来てしまう。カシャン、錆びれた緑のフェンスを掴む。
頭に浮かぶのは、数日前の伊織君の表情。私を見ているようで見ていない、瞳。
多分その理由を聞くと、ボーダーラインを越えることになる。けど、そしたら……いつまで伊織君とこの関係を続けるのか。
自分の気持ちに蓋をし続ければいいんだろう。私は―――。
「あれ、先客がいた」
はっとして振り返ると、そこには伊織君がいて。
「森野さん、どうした?考え事?」
「そんな感じ。伊織君も?」
「俺は、夕焼けが綺麗だなーって」
確かに、綺麗な景色を見たいなら校内でここが一番だ。
蜂蜜色の瞳で藍の彩を映す。白のワイシャツがほのかにオレンジ色に染まっている。
この圧倒される景色に伊織君が飲み込まれるんじゃないかと思ってしまうくらい、溶け込んでいた。
まるで、絵画のよう。