君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】



何で俺じゃなくてあいつなのか。


あいつが女子からの告白だけは全部断ってるってことくらい、知ってんだろ。そんな不毛な想いを抱えるくらいなら。

「俺にしろよ」と言いかけて、言葉を飲み込んだ。


――――――――――――――



――――――――……




「裕貴―、お前帰らねぇの?」


「今日はまだ残ってく。じゃあな」


「おう、お疲れー」


廊下ですれ違った友達に手を振って、自分の教室に入る。


HRが終わって大分時間が経ったから教室には数人しか残っていない。そのなかで窓際の席に座っている香里のもとへ足を動かす。


「ごめん、待たせた」


「いいよ。で、今日はどこを教えればいいんだっけ?」


「全体的に」


「はははっ、アバウトすぎ」


肩をすくませて笑う香里に『本当のことだし』と返事をしつつ、リュックから数学の教科書とノートを取り出して対面する形で席につく。


部活がない日の放課後、たまーにこうして香里に勉強を教えてもらうために教室に残る。


本音を言えば香里と過ごす時間を作るため、だけど。


勉強は二の次だ。


机と机をくっつけて向かい合い、教科書を広げる。


< 45 / 209 >

この作品をシェア

pagetop