君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
何で俺じゃなくてあいつなのか。
あいつが女子からの告白だけは全部断ってるってことくらい、知ってんだろ。そんな不毛な想いを抱えるくらいなら。
「俺にしろよ」と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
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「裕貴―、お前帰らねぇの?」
「今日はまだ残ってく。じゃあな」
「おう、お疲れー」
廊下ですれ違った友達に手を振って、自分の教室に入る。
HRが終わって大分時間が経ったから教室には数人しか残っていない。そのなかで窓際の席に座っている香里のもとへ足を動かす。
「ごめん、待たせた」
「いいよ。で、今日はどこを教えればいいんだっけ?」
「全体的に」
「はははっ、アバウトすぎ」
肩をすくませて笑う香里に『本当のことだし』と返事をしつつ、リュックから数学の教科書とノートを取り出して対面する形で席につく。
部活がない日の放課後、たまーにこうして香里に勉強を教えてもらうために教室に残る。
本音を言えば香里と過ごす時間を作るため、だけど。
勉強は二の次だ。
机と机をくっつけて向かい合い、教科書を広げる。