per*effect:gene
「ど、どうぞ」

私は慌てて髪を撫でつけ、返事をした。

ドアが開く。

「あの、この前もさっきもあんまり話せなかったから」
ドアの向こうに立ちすくんだまま、誠也さんがぎこちなく続ける。
「下の応接間で話せないかな?ここじゃなんだから」
「はい」
私も小さな声で返事をし、彼と一緒に階下へ向かった。


向かい合わせにソファに座る。
誠也さんは細身で、人形のように整った顔をしている。
だけどこの先、私はこの人のことを好きになることはきっとない。
遺伝子の相性がいいだけ。心までは支配できない。
「大学で、どんな勉強されているんですか?」
私が聞くと、誠也さんは
「そんなにかしこまらなくていいよ、普通に、敬語抜きで」
といったあとに、
「ちょと説明がしづらいんだけど、多能性細胞の勉強してるよ。高校で習ったかな?」
「少しだけ」
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