イジワル御曹司に愛されています
私の質問に、松原さんがしみじみうなずきながら答える。都筑くんも同意した。


「下品な話ですが、値段を知ったときは、つけるのやめようかなって」

「かわいいところあるなあ」

「…20万円くらい?」


つい気になって、そっと聞いてしまう。ふたりはぽかんと目を見開き、顔を見合わせると、無言の笑みを私に向けた。


「30万円?」


なにも言ってもらえない。


「50…」


まだふたりとも笑っている。ええ、まさかもっとなの?

両手の指を開いて見せてみると、ついに都筑くんが向こうを向いて吹き出した。


「当たった? もっと?」

「教えない。よく覚えておいて、後で調べてみろよ」


言いながらワイシャツの袖を引き上げ、時計の文字盤をこちらに見せてくれる。そう言われても、どこが覚えておくべき特徴なのか…。


「女性にはわからないよねえ」

「僕らもわからないですもんね、アクセサリーとかバッグとか」

「もてる子の悩みだねー、それは」


揶揄されて、都筑くんが恥ずかしそうに黙る。


「あれ買ってこれ買ってとか、言われた?」

「いや、僕はあんまり、そういうのなかったです」

「あ、今は彼女いないんだ?」

「今は、というか、はい、いないです、けっこうもう、ずっと」

「遊んでるように見えて、そうでもなかったクチかな?」


なぜか私がにらまれた。違うよ、違うよ、私が言ったんじゃないよ。めっそうもない。ひどい濡れ衣。
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