イジワル御曹司に愛されています
調子に乗って、向こうの方にちょっとだけ頭をもたせてみる。

「どした?」と不思議がりつつも、髪をなでてくれたので、やったあ、と内心で素直に喜んだ。


「一所懸命かばってくれたの、かっこよかった」

「かっこ悪すぎだろ、あんなの。必死で」

「そんなことないよ、守ろうとしてくれてるの、感じたよ」


見上げると、都筑くんが当惑したような困ったような、妙な顔をする。


「なに?」

「うん、いや、そういう目つき、やめて」

「えっ?」


どういう目つき?

焦って目をしばたたかせる私に、向こうが口ごもった。


「なんていうか、ええと、誘われてるのかと思う」

「そんな目つきしてる!?」


嘘!

けれど確かに言われてみれば、そんな気になっていなくもない。だってこうして抱きしめられて、しかも身を挺して守ってもらった後で、なんとなく期待してしまうのは普通じゃない?

しかし自覚してしまうと、さすがに赤面。そして都筑くんには、さらに嫌そうな顔をされた。


「…やめろって…」

「ごめん、でも」

「でもじゃなくて。俺、今めちゃくちゃそういう気分だから、きついんだ」

「そ、そういう気分?」


なんで急に?

真っ赤になった私につられたように、都筑くんも気まずそうに視線を揺らす。


「仕方ないんだよ、でかい仕事片づけたりとか、なにか成功させたりとか、達成感味わったときって女抱きたくなるの。男の生理だよ」

「え、そんな本能的な話?」

「本能的な話だから、自分じゃどうにもできないんだろ」

「抑えようよ、そのくらい」

「この状況で言う?」


じろっと見る彼の、片膝を立てた脚の間に私は座っていて、身体は密着。じわっと身体が汗ばんでくるのを感じた。

でも、でも…。

ぽんと肩を叩かれる。
< 133 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop