イジワル御曹司に愛されています
半泣きで訴える私を笑い、松原さんがPCで例文集を作ってくれる。部署のみんなの英語力もまちまちなので、必要な人にはあんちょことして持ってもらえるよう、カードサイズにプリントしておこう。

あと英語の勉強しよう。


「さ、できた。僕、ほかのブース見てくるね」

「ありがとうございます。私もお昼いただいたらいろいろ回ります」

「じゃ、後で」


外は汗ばむほどの陽気というのに、爽やかな人は常と変わらず爽やかだ。にこっと明るく笑んで、彼はブースへと出ていった。

と思ったら、すぐにまた顔をのぞかせた。


「千野さん、王子様が迎えに来てる」

「あっ、はい」


背後を指さしてみせる松原さんにうなずき、私は机の上をさっと片づけてバッグを持った。倉上さんだ。一緒に昼食をとって、ブースを案内してくれる約束なのだ。


「すみません、倉上さん、お待たせしまし、た…」


しかし待ち受けていたのは、予想した人ではなかった。ランチのことを考えながら、晴れやかな笑顔と共に飛び出した私は、足を浮かせて立ちすくむはめになる。


「都筑くん…」

「悪いな、俺で」


仕事を抜け出してきたらしい、スーツ姿に鞄を提げて、壁にもたれて待っていた彼は、どう見ても機嫌がよさそうではない。


「なに、お前的には、迎えに来る王子様っていったら倉上なわけ?」

「ち、違、あの、お昼にって、約束してて」


あれえ、なんで私、怒られているの…。


「仲いいんだな」

「えっ」


そこに軽快な足音が近づいてきた。


「千野さん、行きましょうか! って、都筑、なにやってんの」

「この時間なら千野がいるって、お前が連絡してきたんじゃねーか」

「それで来たの? 素直だなあー。じゃあ、はい」
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