イジワル御曹司に愛されています
「母さんに会った?」
「はい、先日」
「どうしてた?」
「変わりないですよ。名央に会いたがっていました。帰ってあげなさい」
都筑くんが複雑な表情で笑む。親のような慈愛に満ちた顔でそれを見つめ、久芳さんが口を開いた。
「怜二からプロポーズをされたそうですよ」
「はっ? プロポ…え?」
「一生面倒見てやる、と」
素っ頓狂な声をあげた都筑くんの、目がまん丸になる。そうだよ、この間、バカ女とかなんとか、さんざんな言いざまを聞いたばかりじゃないか。
久芳さんの優しい目が、私たちのつないだ手に落ちた。
「名央ももう子供じゃないようなので、言っても理解できますかね。陽一は妻がありながらきみのお母さんを手に入れたように、ある面では決して誠実と言える男ではなかった」
「まあ、そうだろうね」
「名央には愛情を注いでいたけれど、女性への執着にはむらがあった。きみのお母さんは敏感にそれを感じ取り、さみしい思いもしていた。そんな中、常に変わらず彼女に優しくしたのが、怜二だったんです」
都筑くんはぽかんとして聞いている。もしかしたら自分が産まれる前から続く、親たちの愛憎劇に、初めて接したんだろう。
「きみのお母さんは非常に女性らしいたくましさと弱さを持っている人だ。つまり、愛してくれる人のそばにいたいと素直に願い、行動に移す人です」
「…それは、きれいに言いすぎじゃない?」
「おや、僕が思っているより、名央はまだ子供なのかな。男女の仲がいつでも整然ときれいに進むと、今でも信じている?」
ふわっと都筑くんの耳が染まり、手の温度が高くなった。「信じてないよ」と言い募るさまは、残念ながらとても子供っぽい。
「怜二があの歳になるまで独身でいる理由を、今度聞いてみなさい」
「母さんをずっと好きだったってこと?」
「途切れることなくそうだったのかどうかも、そもそも本人に自覚があったかどうかも定かではないですが、きみのお母さんさえいなければ、適当なところで見合いでもしてたのではと、僕は考えてますよ」
都筑くんは黙り込み、地面に向かって「うわあ」と小さくつぶやいた。
「はい、先日」
「どうしてた?」
「変わりないですよ。名央に会いたがっていました。帰ってあげなさい」
都筑くんが複雑な表情で笑む。親のような慈愛に満ちた顔でそれを見つめ、久芳さんが口を開いた。
「怜二からプロポーズをされたそうですよ」
「はっ? プロポ…え?」
「一生面倒見てやる、と」
素っ頓狂な声をあげた都筑くんの、目がまん丸になる。そうだよ、この間、バカ女とかなんとか、さんざんな言いざまを聞いたばかりじゃないか。
久芳さんの優しい目が、私たちのつないだ手に落ちた。
「名央ももう子供じゃないようなので、言っても理解できますかね。陽一は妻がありながらきみのお母さんを手に入れたように、ある面では決して誠実と言える男ではなかった」
「まあ、そうだろうね」
「名央には愛情を注いでいたけれど、女性への執着にはむらがあった。きみのお母さんは敏感にそれを感じ取り、さみしい思いもしていた。そんな中、常に変わらず彼女に優しくしたのが、怜二だったんです」
都筑くんはぽかんとして聞いている。もしかしたら自分が産まれる前から続く、親たちの愛憎劇に、初めて接したんだろう。
「きみのお母さんは非常に女性らしいたくましさと弱さを持っている人だ。つまり、愛してくれる人のそばにいたいと素直に願い、行動に移す人です」
「…それは、きれいに言いすぎじゃない?」
「おや、僕が思っているより、名央はまだ子供なのかな。男女の仲がいつでも整然ときれいに進むと、今でも信じている?」
ふわっと都筑くんの耳が染まり、手の温度が高くなった。「信じてないよ」と言い募るさまは、残念ながらとても子供っぽい。
「怜二があの歳になるまで独身でいる理由を、今度聞いてみなさい」
「母さんをずっと好きだったってこと?」
「途切れることなくそうだったのかどうかも、そもそも本人に自覚があったかどうかも定かではないですが、きみのお母さんさえいなければ、適当なところで見合いでもしてたのではと、僕は考えてますよ」
都筑くんは黙り込み、地面に向かって「うわあ」と小さくつぶやいた。