イジワル御曹司に愛されています
うっ、ここに来てそう来る。

甘酸っぱい話題なのに、どうしてこんな空気が冷ややかなんだろう。私が鈍かったからか、そうか。


「き、嫌いじゃないって言ったよね」

「後出しでな?」

「それ言ったら、自分こそ全部後出しじゃない!」


つい本音が漏れて、ますます冷たい視線をもらってしまった。


「じゃあ当時、好きですとでも言ってやりゃあよかったな」

「いえ、とんでも…すみません…」


言われたとしても私、絶対そのまま受け取るなんてできなかった。嫌がらせもここまで来たかと猜疑心で毛を逆立てるのが関の山だ。

テーブルの上に置いた煙草の箱を、吸おうかどうしようか迷っているみたいに片手でもてあそびながら、都筑くんが口を開く。


「ごめんな、あのころ」

「え」


まっすぐな目がこちらを見た。


「いつか、ちゃんと謝りたいと思ってた。俺、お前の高校生活に楽しくない記憶、作っちゃっただろ。ごめん」


私はなにも言えず、ゆるゆると首を振る。


「…そんな」

「俺、なんで千野が気になるのか自分でもわかってなかったんだよな。わかってたら、もう少しやりようがあったと思うんだけど」

「そう、なの?」

「ガキすぎるだろ。卒業式の日、お前にもう会いたくないって意味のこと言われて、びっくりするくらいショックで、それで気がついたんだ」


聞いてしまって以来、私の中でもトラウマと化したあの日の話が急に出て、ずきっと胸が痛んだ。

都筑くんはばつが悪そうに、ちょっと笑って鼻の頭を掻く。


「その場で謝ることもできないくらい、そのときは衝撃受けてて、今思うと、ほんとどれだけガキなんだよっていう」

「あの、あの…私こそ、ごめん」

「悪くないのに謝るなって」
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