イジワル御曹司に愛されています
「ありがたいんだけどさあ、お前さあ、なんていうかさあ…」
「賢いだろー? 役に立つし、保管するのも邪魔じゃないし」
倉上の手が、名央が鞄に入れようとしたそれをまた取り上げた。自分の功績を確認するように、せっかくしまったのを取り出し、眺めだす。
「よくみんな書いてくれたな」
「え、気が利いてるってすごい好評だったよ」
「もらう立場になってもそれ言えんのかよ…」
というか、もう少し渡す場所を選べよ…。
まあこれも、計画のうちに違いない。さすが倉上、自分が楽しむためなら労を惜しまない。
「いいじゃん、使うたびみんなのこと思い出せるんだぜ?」
「萎えるわ!」
「そんなの、彼女にまた元気にしてもらえばいいだろー」
「あのな、千野はまだそんな芸当…」
噛みつくように言い返しかけて、失言に気がついた。
こちらに向けられた倉上の目が、みるみる見開かれていく。
「えっ…なに、いや、そうじゃないかとは思ってたけど、まさかほんとに」
「あの、倉上、今のは」
「マジで千野さんなの? えええ、焼けぼっくいに火がついた的な?」
「違う違う、それは違う」
「なにが営業だよ、彼女待ってんじゃん!」
「営業って言ったのはお前だよ!」
きゃー!と女子みたいな声をあげ、倉上は喜んでいるんだかからかう気満々なのかわからない顔で、目をきらめかせている。
ドアベルが、コロンと鳴った。
はっとしてそちらを見れば、よりによってこのタイミングで千野。走ってきたようで、乱れた髪を手で直しながら、店内を探している。名央を見つけ、その顔が輝いた。
「賢いだろー? 役に立つし、保管するのも邪魔じゃないし」
倉上の手が、名央が鞄に入れようとしたそれをまた取り上げた。自分の功績を確認するように、せっかくしまったのを取り出し、眺めだす。
「よくみんな書いてくれたな」
「え、気が利いてるってすごい好評だったよ」
「もらう立場になってもそれ言えんのかよ…」
というか、もう少し渡す場所を選べよ…。
まあこれも、計画のうちに違いない。さすが倉上、自分が楽しむためなら労を惜しまない。
「いいじゃん、使うたびみんなのこと思い出せるんだぜ?」
「萎えるわ!」
「そんなの、彼女にまた元気にしてもらえばいいだろー」
「あのな、千野はまだそんな芸当…」
噛みつくように言い返しかけて、失言に気がついた。
こちらに向けられた倉上の目が、みるみる見開かれていく。
「えっ…なに、いや、そうじゃないかとは思ってたけど、まさかほんとに」
「あの、倉上、今のは」
「マジで千野さんなの? えええ、焼けぼっくいに火がついた的な?」
「違う違う、それは違う」
「なにが営業だよ、彼女待ってんじゃん!」
「営業って言ったのはお前だよ!」
きゃー!と女子みたいな声をあげ、倉上は喜んでいるんだかからかう気満々なのかわからない顔で、目をきらめかせている。
ドアベルが、コロンと鳴った。
はっとしてそちらを見れば、よりによってこのタイミングで千野。走ってきたようで、乱れた髪を手で直しながら、店内を探している。名央を見つけ、その顔が輝いた。