イジワル御曹司に愛されています
きっぱりと言われ、胸がざわついた。
あんなに親しげにくっついていたくせに。写真、持ち帰ってあげようか。
『なに黙ってんだよ』
「…なんでもない。番号、伝えておくね」
『どうぞ。ごくろうさん』
言い捨てるなり、都筑くんはブツッと通話を切った。熱を持った携帯を眺め、呆然とする。
あれ…もしかして、本当に怒らせた?
いつもの皮肉とかからかいとかじゃなく、本気で不快そうな声だった気がする。
どうして?
嫌なら嫌って言ってくれれば、伝えなかったよ、私。
未沙ちゃんとなにかあった…わけじゃないよね、覚えていないんだものね。
携帯をバッグに戻そうとして、内ポケットの中の飴に気づく。まるでごほうびみたいに、都筑くんからもらった飴。もったいなくて食べていなかったのだ。
パーティホールの片隅で、途方に暮れた。
どうして? なにが嫌だった?
かけ直して謝ったほうがいい? でもなにを?
絶望に涙が出そうになる。
都筑くん、どうして…?
* * *
「寿、だらだらしてるならお店出てちょうだい」
「だらだらしてない、のんびりしてるの」
「お前、東京でそういう言い訳学んできてるのか」
「お兄ちゃん!」
母の後ろから、兄が笑いながら顔を出したのを見て、私は急いでこたつを出た。
「手伝います」
「まー、お兄ちゃんの言うことなら聞くわけね」
「うん、そういうわけ」
住居から廊下でつながっている工場を抜けると、店頭に出る。途中で割烹着を着て、三角巾を頭に巻いた。
我が家は曽祖父の代から続く和菓子店。
あんなに親しげにくっついていたくせに。写真、持ち帰ってあげようか。
『なに黙ってんだよ』
「…なんでもない。番号、伝えておくね」
『どうぞ。ごくろうさん』
言い捨てるなり、都筑くんはブツッと通話を切った。熱を持った携帯を眺め、呆然とする。
あれ…もしかして、本当に怒らせた?
いつもの皮肉とかからかいとかじゃなく、本気で不快そうな声だった気がする。
どうして?
嫌なら嫌って言ってくれれば、伝えなかったよ、私。
未沙ちゃんとなにかあった…わけじゃないよね、覚えていないんだものね。
携帯をバッグに戻そうとして、内ポケットの中の飴に気づく。まるでごほうびみたいに、都筑くんからもらった飴。もったいなくて食べていなかったのだ。
パーティホールの片隅で、途方に暮れた。
どうして? なにが嫌だった?
かけ直して謝ったほうがいい? でもなにを?
絶望に涙が出そうになる。
都筑くん、どうして…?
* * *
「寿、だらだらしてるならお店出てちょうだい」
「だらだらしてない、のんびりしてるの」
「お前、東京でそういう言い訳学んできてるのか」
「お兄ちゃん!」
母の後ろから、兄が笑いながら顔を出したのを見て、私は急いでこたつを出た。
「手伝います」
「まー、お兄ちゃんの言うことなら聞くわけね」
「うん、そういうわけ」
住居から廊下でつながっている工場を抜けると、店頭に出る。途中で割烹着を着て、三角巾を頭に巻いた。
我が家は曽祖父の代から続く和菓子店。