例えば危ない橋だったとして

「……腹減ったし……何か食いに行こ」
「えっ……うん」

帰らなくて大丈夫なのかな? と過ぎったが、そんな野暮なことを伺うのはやめた。
黒澤くんと幾度もデートを重ねた金曜日。
またデート出来ることが、嬉しくて仕方なかった。


今日は駅を通り過ぎ2~3分程歩いた所にある、お洒落なエスニック料理屋に連れて来てくれた。
店内は照明が仄暗く、落ち着いたムードが漂っている。

テーブルの角を挟んで隣同士にソファがある、いわゆるカップル席に通された。
いつかの個室居酒屋を彷彿とさせ、気持ちが高揚して来た。
何をいきなりやらしいことを思い出しているのか。恥ずかしくて顔から火が出そう。


とりあえずビールと生春巻きを注文した。
メニューを眺めながら、横目で黒澤くんに視線を送る。
絞った照明に照らされた横顔が、ものすごく色っぽい。
わたし今度こそ本当に、黒澤くんの彼女になったんだよね?
熱視線を送り過ぎて、黒澤くんと目が合ってしまった。

「……どうした?」
「いや……夢じゃないかなって思って」

目は合わせられずメニューを見つめ、頬を赤らめた。
すると黒澤くんがテーブルの外側に視線を移し、頬杖を付いてつぶやいた。

「……可愛い」

かっ、かわ……!?
うろたえて顔を上げると、黒澤くんも頬を染めている。

何だこれ。甘過ぎて卒倒する。

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