例えば危ない橋だったとして

「異動するんだよ、俺」

咄嗟に言葉を飲み込めず、周囲の音が消えた。

徐々に脳内を言葉が廻り、浸透して行く。

いどう……
いなくなる、さつきが

「……おい……」

わたしの異変を察知した皐が、身体を離し顔を合わせた。

わたしの目からは大粒の涙が溢れていた。
拭っても拭っても、後から後から流れ落ちる。

「ちょっと……わかってる? 異動って言っても、県内だから」
「……そうだろうね……!」

「会おうと思えば、仕事終わりにだって会えるし……ただ、毎日会えなくなるだけ」

皐の指が優しくわたしの涙を拭い、その顔は少し困ったような優しい微笑みを浮かべた。

「……皐だって、動揺したんでしょ……」
「……まぁ、そうだけど……」

胸元にわたしの頭を抱き、柔らかく髪を撫でる。


わかってる、会えなくなるわけじゃない。

ただこの数ヶ月間は、あまりにも濃密で、煌めいていて……わたしにとって掛け替えのない、大切な大切な時間だったから……。

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