舞龍
凍った部屋の空気をどうにかしなくてはと思い、とりあえず笑ってみた。すると迅が

「雅、やっぱお前最高だわ」

そう言いながらあたしの腕を引っ張った。重力には逆らえず、迅の座っていたソファーに倒れ込む。

あー。今絶対見えたよ。パンツ見えちゃったよ。なんて場違いなこと考えてたら、目の前に迅の顔があった。そして迅は


「雅。お前、炎鳳の姫になれ。」


あたしに大きな爆弾を落とした。


するとピンクが


「そーだよ!雅ちゃんー!姫になってー!」


青色はクツクツと喉を鳴らしている。
けど認めてはないようだ。


ブロンドはチッと舌打ちしそっぽを向いた。


オレンジは依然あの笑みをあたしに向けてくる。


「いやだ。」



だけど。あたしはあんた達の姫になることは出来ない。
ごめんね。


断られたことが意外なのか迅やピンクだけでなく、そっぽを向いていたブロンドまでもがこちらを振り返った。


「例えば、あたしが姫になったとして、あなた方にもあたしにもなんのメリットもないじゃないですか。」


そう淡々と言葉が綴られていく。


「姫。その存在が族にとってどれほど危険な存在か、なんてあなた方が一番わかってるんじゃないですか?姫は常に弱味になる。どんなときでも、ね。」


すると迅は、



「んなことかんけぇねぇよ。弱みになろうがなんだろうが俺がお前を欲しいと思ったんだからお前は俺ら炎鳳のものだ。ゴタゴタ言わずに姫になれ。」


なんて言い出した。


「は?」


思わず不満が声に出た。


「話聞いてた?あたしは姫になることでメリットなんてないって説明したよね。迅。あたしはあんたらの弱みになるつもりも、守られるだけの立場になるつもりも毛頭ないの。」


守られるだけなんてもううんざりだ。

絶対守り抜くって決めたのに。

最後には守られて。

あなたはあたしを守って。

いなくなってしまったのだから。






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