シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 母が出かけた後、食卓に広げられた新聞(父が出勤前に読む)を確認した。
 認識している「今」より八年も前の日付。
 いや、たまたま保管しておいた古新聞を引っ張り出しただけかもしれない。
 テレビをつける。
 オリンピックの中継をやっていた。
 過去映像だろうか。
 とっくに終わったオリンピックが開催されている。

 水泳のリレーみたいな種目。確か日本人男子は銀メダルを取ったはず。選手の一人がかっこよくて、にわかファンだったから憶えている。
 確か、指一本分くらいの差で、金メダルを逃すんだよね。
 見ていたら、記憶のとおりにレースが展開していった。
男泣きをする日本選手チーム。
 銀でも充分すばらしい、とナレーターが力説しているけれど、金メダルを目指して努力してきた選手としてはくやしくてたまらないだろう。
 お目当ての選手も歯を食いしばり、インタビューに答えている。
 懐かしい名場面を振り返る番組だろうか。
 チャンネルを変えてみた。
 ひとつの局で天気予報をやっていた。
 台風が沖縄のそばに居座っているらしい。今夜あたり上陸しそうだ、と言っている。
 別の局。
 これまた懐かしいドラマをやっていた。昔、母が好きだと言って見ていた法廷ドラマ。名作かもしれないけれど、完全にレトロの域。
 テレビ業界は一斉に再放送キャンペーンを始めたんだろうか。
 放送の途中からになるけれど、録画しておいてあげようかな、とテレビ台の下の扉を開けたわたしは固まった。
 DVDプレイヤーが、古い。ブルーレイディスクを見られないタイプだ。

「いやいやいや……」

 独り言が出た。
 ないない。こんなのありえない。
 せっかく買い替えた最新型をしまって、古いプレイヤーを出しておく必要などないはず。
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