シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 首をひねりながら、二階の自分の部屋に戻った。
 制服が目に入る。どうしてまた急に制服を出してきたのか、さっき母を問い詰めればよかった。
 いつまでもパジャマでうろうろしていたくないから、クローゼットを開けた。
 思わずため息が漏れた。何なの、これ。
 大学に入ってから買いそろえたお気に入りブランドの服は一着も見当たらず、妙に懐かしい服が並んでいる。
 自分で服を選ぶようになった頃の、でも今見ると気恥ずかしいデザインばかり。
 終わってると思いながら着るのも嫌だから、なかなか手を伸ばせない。

 そうだ、携帯。携帯を見れば、この不思議な「時間巻き戻り」現象の理由がわかるかもしれない。
 名案に胸を弾ませながら、携帯を確認する。
 新聞で見たのと同じ日付が表示されている。何のヒントにもならない。
 メールボックスを開けてみる。
 最新の既読メールは、亜依からだった。

『明日から合宿だね! 学校に泊まるなんてわくわくだー』

 差し出された日付は、昨日だった。正確には、今が八年前の八月一日だとして、七月三十一日に送られたメールだ。
 本当に今日から、合宿が始まるのだろうか。
 軽音部の合宿は、二泊三日で学校に滞在する。
 他の部活、たとえば天文部は毎年恒例らしいけれど、軽音部としては初めての試みだと、顧問の衛藤真百合(えとう・まゆり)先生が言っていた。
< 26 / 206 >

この作品をシェア

pagetop