シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 学校に行こう。合宿に参加しよう。
 そう決めたからには、まず制服を着なければ。
 サイズが自分に合うかどうかわからないけれど、流行遅れの私服を着ていくよりはましだ。
 どきどきしながら袖に腕を通す。
 胸元のリボンの結び方は指が憶えていた。
 スカートのウェストホックもあっさり留まった。
 化粧は今の顔にそぐわないからパスするとして、せめて日焼け止めを塗っておきたい。自分の部屋を探しても見当たらず、母のものを拝借した。
 一階のエアコンを消し、玄関に行くと、当たり前のように当時のローファーがあった。かかとを押し込む。
 玄関を施錠して外に出ると、蝉の声がすごい。大音量にくらくらする。
 歩き始めると、汗が噴き出した。
 昨日まで晩秋だったのに、いきなり酷暑に放り込まれて、頭も身体もびっくりしている。

 登校中は特におかしな現象には遭遇しなかった。
 コンビニの入り口には、フローズンドリンクの宣伝ノボリが立っている。スポーツクラブの前では、スイミングスクールに通ってくる子どもとその保護者が汗をふきふき、話をしている。
 街の様子は昨日までと変わらない。
 もっとも、わたしは普段目にしている景色にそれほど注意を払っていない。毎日通っている道でも、建物が撤去された空き地を見て、以前にどんな建物がそこにあったか思い出せないことはよくある。
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