シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 本当にここは八年前の世界なんだろうか。
 新聞や携帯のカレンダーが教える日付を信じるなら、そうなのだけれど。やはりどうしても事実として呑み込むのが難しい。
 もしかして夢を見ているのかもしれない。
 すごく現実感があるけれど、夢の中なら何でもありだ。若返って過去に戻ってもおかしくない。
 はっきりしているのは、季節が夏だということ、その一点のみだった。

 鞄にくくりつけられていたパスケースのIC乗車券でバスに乗る。涼しい。一人がけの椅子が空いていたので座った。
 そういえば、と鞄の中を探る。
 わたし、お金をいくら持ってるんだろう?
 まさかの一文無し?
 背中に冷汗をかきながら、鞄の底に昔使っていた財布を見つけた。中身は……中学二年生には相応の、千円札三枚と硬貨数枚。
 当然ながらクレジットカードは入っていない。
 三千円あれば、どうにか過ごせる気はする。
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