Des gouttes de larmes 〜涙の雫〜
『奈々ハンバーグとっても美味しかった! ありがとう!
ケーキ食べる?』




『うん! 食べる!』




それを聞くと、雄大は冷蔵庫からシャンパンとケーキを持ってきた。




『じゃーん! チョコレートケーキ!ロウソクは数字の2と9でーす!』




『うわ〜。美味しそう! まだ、後1時間ぐらい28歳だもん! 』




もう少しで、私の20代最後の年が始まる。




でも、歳をとる時の嫌な気持ちは、前に比べて全然感じなかった。




『じゃあケーキは12時なって奈々が29になってからで、先にシャンパン飲もう!』




『うん、そうする』




雄大はケーキを冷蔵庫へ戻した。




そして、シャンパンをグラスに注いでくれた。




『奈々の28歳最後の夜に乾杯』



『何それー?なんか寂しいけど、ありがとう乾杯』




私達は笑いながらシャンパンに口をつけた。




刻一刻と私の28歳が終わろうとしていた。




その時だった。雄大のケータイが鳴った。




『ちょっとごめん!』




慌てて雄大がカバンに向かった。




そして、慌てて戻ってきた。




私が疑問に思っていると、また雄大のケータイが鳴った。




『奈々誕生日おめでとう!はいっ!プレゼント!』




『えっ何!何!』




私は何がなんだか、わからなかった。




『12時ちょうどになったら、すぐ言えるように、11時59分と12時にアラームかけてたんだ。
俺が一番に奈々におめでとう言いたくて』




雄大が照れながら言う。




私は、嬉しくて涙が出てきた。




『あ゛りがどぅ〜』




『奈々泣かないでよ〜。ほらほらプレゼント開けてみて』




『ゔん』




私はプレゼントを開けてみた。




そこには、船のイカリをモチーフとした、ネックレスが入っていた。




私はそれを見てまた号泣した。




『奈々もう泣くなよ〜』




『だっで〜ゔれしくで』




もう声になってない。




『ほらほら涙と鼻水拭いて。』




雄大が私の顔をティッシュで覆う。




『鼻水は出てないもん!』




私は笑いながら、雄大からティッシュを奪い涙を拭いた。




『奈々は泣くより笑ってる方がいい』




雄大が微笑む。




私は雄大に抱きついた。




『雄大 好き!大好き!』




『ありがとう。俺も奈々の事大好きだよ』




そう言うと、私達は唇を重ねた。




私の29歳ファーストキスだ。
< 33 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop