世界が終わる音を聴いた
これは他地区から来た人が迷うわけだよね。
縦横無尽に名前を変えて広がる地下街を、なんとか記憶を元に通り抜けて再び地上に上がると、街はすっかり夕方のオレンジに染められてた。
大通りに面した地下街の出口を背に横断歩道を2つ越えて、脇道に入る。
そこは、この街の中心地にありながら、アパートやマンションの立ち並ぶ住宅街で、すぐそこの街の喧騒など我関せずで静かに時間が流れている。
その住宅街の並びにある、木目の壁に蔦の這う一軒のカフェ&バーへと私は足を踏み入れた。
重い扉を開けてカラン、と鳴るのはレトロなカウベル。
ガラスの窓が、店内に柔らかく光を受け入れている。
「いらっしゃい」
にこりと笑う店員さんは、ここのオーナーの弟さん。
そっくりな顔のオーナーとは違いとても愛想が良い。
「こんにちは」
「久しぶりだね?どうしてたの」
なんて、友だちのような口調で招き入れられるけれど、そこにイヤミを感じさせない。
きっとこの人、この職が天職なんじゃないかな。
「ちょっと、まぁ色々とありまして」
へへっと笑うとその人は仕方がないな、とでも言いたげな顔で笑った。
通された席で、コーヒーを頼んでそのまま今日の目的を告げる。
「ずっと弾いてなかったギターなんだけど、ちょっと見てもらえませんか?」
瞳が見開いたのは多分、驚いた証。
その驚きはどこにあるのかはわからないけれど。
「見せてくれる?」
「お願いします」
コーヒーを持ってくる前に、その手を差し出されたから遠慮なくギターを渡すと、すぐさまケースから取り出してチェックする。
ギターを見る眼差しは真剣だ。
その姿を私もまた緊張して見守る。
「変わらないね、このギターは」
真剣だった眼差しが、ふと緩んだのは、その言葉をいった瞬間だった。