偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

「アイツは余計なことをペラペラと…」


眉間にぐっと皺を寄せ、柳原さんは私と目を合わせずにコーヒーのカップを口につける。


「とりあえず出るぞ」


無言でじーっとその様子を見ていたのだけれど。
彼は伝票を持ち、私を置いて先にスタスタと会計へと向かってしまって。
私も慌ててその後を追ってカフェを出た。


「お前さ、いつから俺のことゲイだと思ってたわけ?」


ゆっくりとした足取りで歩きながら、路上でふと彼が私に尋ねる。


「え……えーっと……
この結婚話が出るちょっと前くらいです」

「はぁ?! なんでそんな誤解が…」

「だって社内では噂になってましたよ。兼古くんと付き合ってるって…」


そうだ。私はそれを鵜呑みにしただけだ。
誤解しているのは私だけじゃない。

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